ブラックマスは、使用済みリチウムイオン電池や電池製造工場のスクラップから生まれる、
リチウム・コバルト・ニッケルなどの金属を含んだ粉末状の中間原料です。
EV(電気自動車)市場の拡大や、グローバルなサーキュラーエコノミーの推進とともに、
このブラックマスは近年「次世代資源」として注目を集めています。
本記事では、ブラックマスの価格動向とその背景、そして今後の市場見通しについて解説します。
🔍 ブラックマスとは?
ブラックマス(Black Mass)とは、リチウムイオン電池を破砕・処理した際に得られるリサイクル素材で、
主に以下の有価金属を含んでいます:
- リチウム(Li)
- コバルト(Co)
- ニッケル(Ni)
- マンガン(Mn)
これらはリチウムイオン電池の正極材や電解液に含まれ、精錬・分離を通じて再利用可能です。
再生資源としての経済的・環境的な価値が年々高まっています。
📈 直近の価格動向(2025年春から夏)
2025年4月時点の相場では、NCM523ブラックマスの中値価格は 6.37ドル/kg となり、
前月(5.93ドル/kg)比でやや上昇しました。
- コバルトとニッケル価格は安定~上昇傾向
- リチウム価格は供給過剰と先物市場の弱さで下落傾向
価格を押し上げる要因
- DRコンゴのコバルト輸出規制など地政学的リスクの高まり
- 欧州でのブラックマス輸出規制の強化
- 金属塩価格(Ni, Co, Li)の高騰
これらが供給不安を招き、ブラックマス価格を支えています。
🌍 世界市場のトレンド
- 2023年~大手調査機関による定期価格査定の導入
- 市場規模は:
- 2023年:約63.9億ドル
- 2024年:70.2億ドル
- 2030年予測:125.9億ドル(年平均成長率 CAGR 約10%)
- 欧州や北米の大手OEM企業・リサイクラーが回収体制を拡大中
- アジア市場(特に中国・韓国・東南アジア)での競争激化
リサイクル技術の高度化、精錬キャパシティの拡大がビジネスの鍵になっています。
💡 過去の事例:急騰と急落を繰り返す価格変動
【2021年】EV需要急増による価格急騰
EV販売の世界的なブームにより、バッテリー原料の需要が爆発。
ブラックマスの取引価格も金属相場に連動して大きく上昇しました。
2021年にはリチウム価格が前年比で約5倍、コバルトは3倍以上になり、
それに伴いブラックマスも高騰(出典:Forbes)
【2023~2024年】中国での供給過剰とリチウム価格崩壊
その後、LFP(リン酸鉄リチウム)系電池の生産が拡大し、中国内でのリチウム供給が過剰に。
価格が反落し、ブラックマス価格も下落。
2024年にはLFP系ブラックマス価格がピークから39%減、NCM系でも精錬原料価格比で
72~75%水準まで落ち込んだ事例もあります(出典:Benchmark, DiscoveryAlert)
📊 ブラックマス相場の価格変動要因
要因 | 相場への影響 |
リチウム価格 | 供給過剰 → 相場下落/不足 → 上昇 |
コバルト・ニッケル価格 | 高騰すればブラックマス価値も上昇 |
地政学リスク | 資源国の輸出停止や政情不安で価格高騰 |
輸出入規制・政策 | EU・中国などでの規制が需給に影響 |
EV・再エネ需要の増加 | 中長期的な需要増で市場拡大へ |
🔮 今後の見通し
- コバルト価格の高止まりと欧州規制強化により、短期的にはブラックマス価格は上昇~高値安定が予想されます。
- 一方で、リチウム供給の過剰感が続く場合、ブラックマス全体の価格を押し下げる圧力も残ります。
- 長期的には、EVバッテリー廃棄の本格化(2026年以降)により供給量が急増。
精錬キャパシティの不足が新たな課題に。
✅ まとめ
- ブラックマスは、EVリサイクルの中核資源であり、グローバル需要の高まりとともに市場価値が上昇中。
- 相場は、金属価格・規制・地政学的要因に大きく左右される。
- 2025年春時点では、コバルト価格高騰・欧州輸出規制強化が価格を支え、やや上昇傾向。
- 中長期では、循環型社会の実現に向けたインフラ整備・技術進化と連動してさらに拡大が期待される分野です。
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