~使用済み電池から再び資源へ~
近年、EV(電気自動車)やスマートデバイスの普及により、リチウムイオン電池の使用量は飛躍的に増加しています。
それに伴い、電池のリサイクル需要も急速に拡大しています。
中でも「ブラックマス(Black Mass)」は、電池リサイクルにおける中核的な存在として注目されています。
本記事では、ブラックマスがどのように生成され、どのようなプロセスを経て再資源化されるのか、
そのリサイクル工程を詳しく解説します。
◆ ブラックマス(BM)とは?
ブラックマスとは、使用済みのリチウムイオン電池を破砕・粉砕し、分離工程を経た後に得られる、
金属を豊富に含んだ黒色の粉末状の中間素材です。
主に以下の有価金属が含まれています:
- リチウム(Li)
- コバルト(Co)
- ニッケル(Ni)
- マンガン(Mn)
- 炭素(グラファイト)など
このブラックマスは、金属資源として再利用されるための「原料」として扱われています。

◆ ブラックマスのリサイクル工程(全体フロー)
ブラックマスのリサイクルは、以下の工程に分かれます。
1. 電池の収集・前処理
- 回収された使用済みリチウムイオン電池は、安全のため放電処理を行った後、外装を除去し、内部を破砕・粉砕します。
2. 物理分離(メカニカル分離)
- 粉砕された電池素材から、銅・アルミホイルなどの金属片やプラスチックを取り除きます。
- この過程で、BMが生成されます。
3. 化学処理(湿式 or 乾式)
▸ 湿式製錬(Hydrometallurgy)
- 酸(硫酸など)を用いてBMを溶解し、目的の金属イオンを抽出。
- 溶液中から沈殿や溶媒抽出などにより、リチウム・コバルト・ニッケルなどを個別に分離・回収。
▸ 乾式製錬(Pyrometallurgy)
- BMを高温炉で焼成・還元し、金属をスラグとマットに分離。
- 炉内で得られる金属合金をさらに精製することで回収。
※近年では、エネルギー効率・回収率・環境負荷の観点から「湿式製錬」が主流になりつつあります。
4. 精製・製品化
- 抽出・分離された金属は、さらに精製され、電池材料(正極材、負極材)として再利用されます。
- 一部の炭素や金属は他の産業用途にも活用されることがあります。
◆ リサイクルの技術的課題と今後の展望
ブラックマスのリサイクルは高い技術力を要する分野であり、以下の課題があります:
- 含有成分のバラツキ(電池の種類や劣化具合により変化)
- リチウムの高効率回収(リチウムは特に分離が難しい)
- 処理プロセスのコストとエネルギー効率
- 環境負荷(排水処理、廃ガス処理など)
これらの課題に対応するため、各国・各企業が独自のリサイクル技術を開発しており、処理効率の向上とコスト低減、環境配慮の両立が今後の鍵となります。
◆ ダイネンマテリアルの取り組み
ダイネンマテリアルでは、インドを拠点に、安定した品質のブラックマスの製造と、金属回収プロセスの最適化に取り組んでいます。
- 品質管理を徹底した処理プロセス
- 多様な原料に対応した技術設計
- グローバル市場(特にアジア・欧州)への安定供給体制
- 将来的な直接輸出(例:中国)に対応する準備
を進めており、今後も再資源化技術の進化とともに、より持続可能なリサイクルの実現を目指します。

◆ まとめ
ブラックマスのリサイクルは、資源循環・脱炭素社会の実現に欠かせない重要なプロセスです。
ダイネンマテリアルは、グローバルな視点と現場力を活かしながら、信頼されるパートナーとして、
次世代の資源リサイクルに貢献してまいります。